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鳥は死ぬことを知らない

 11月9日,歌舞伎座百二十年吉例顔見世大歌舞伎を見に行く機会があったんだけど,
 ・・・スゲーー後味の悪いもの見ちゃった・・・
 演目は
  1. 寺子屋 (~菅原伝授手習鑑) 
  2. 船弁慶(ふなべんけい)
  3. 八重桐廓噺(やえぎりくるわばなし) 嫗山姥(こもちやまんば)
 寺子屋と船弁慶は人気演目らしいけど嫗山姥はよく知らない。
 何が後味悪いってトリの嫗山姥の突拍子もない話の展開。寺子屋も陰惨な話で,涙を誘う話らしいんだけど時代にてらして考えても,どうしても感情移入できなかった・・・。

 まず「寺子屋」。
 菅原道真(あの天神様ですよ)の家臣の武部源蔵(中村梅玉)が道真の子・菅秀才をかくまって寺子屋の先生に身をやつしてるところへ,それをどっからか聞きつけた道真の敵・藤原時平の遣い春藤玄蕃が来るという知らせが入ったので源蔵夫婦はその日入学してきた小太郎という子供を菅秀才の身代わりにすることにします(エッ)。やがて春藤玄蕃が乗り込んできて菅秀才を出せといって,寺子屋の子供たち全員の首実検をするんだけど,その中に菅秀才がいない(菅秀才は隠してある)。怒った春藤玄蕃は子供の数より机の数が多いことに気づいて源蔵に迫り,窮した源蔵はとうとう裏で小太郎を斬首してその首を春藤玄蕃と実際に首実検をする役目の松王丸(片岡仁左衛門)の前に差し出します。他人の子ですよ!
 現代の感覚ではえ~~そりゃないよ~,と思うんだけど,身代わりにすることを決意するこの芝居の源蔵の名ぜりふ「せまじきものは宮仕えじゃなぁ」という言葉どおり,この時代(平安)には道真様のためなら残酷だけど他の子の命さえ犠牲にすることもやむをえずということなんだろうか。「まじき」は動詞の否定で直訳すると「宮仕えはするものじゃないなぁ」みたいな意味だけど,状況的に「自分が宮仕えの身でさえなければ罪もない子を犠牲にすることもなかったのになぁ」という悲嘆。でも起きてることはどこぞの国のテロリストのやってることと似たような感じでなんかきもちわるいんだけど。
 で,松王丸はこの首こそ菅秀才ということで春藤玄蕃は満足して首を持って帰ります・・・
 おそろしいのはここからですよ。
 なななななんと,首を斬られた小太郎は,実は首実検をする役目だった松王丸の子なんです!!もともと道真様の子を守るために自分の子を身代わりにしようと,当日源蔵の寺子屋へ寺入りさせたっちゅーんですよ。(((( ;゜Д゜)))あががががテリブル。松王丸は道真様への報恩のために,自分の子の生首を見て菅秀才の首に相違ないと一世一代の大ウソをついたわけです。
 そのあとの展開は源蔵夫婦と松王丸の夫婦,菅秀才とその側近そろって小太郎のお弔いです。源蔵が裏から松王丸が持ってきた死に装束を着せた小太郎の首なし遺体(もちろん等身大人形。きもちわる~~)を持ってきて,源蔵の妻はお葬式のお焼香に使う台を持ってきて,みんなで小太郎を弔います。
 この場面が泣き所らしいんです。小太郎は斬首されるとき「にっこり笑うて」死んだと源蔵に聞いて松王丸は,小太郎(道真様のために)よくやったと大泣きするんだけど,小太郎は道真様のためなら本望だから笑うたのか,それともただ子供の無邪気で何かの遊びかと思って笑うたのか,はなはだ疑問だよね。どっちかわからないのが悲しいのかもしれないけど。
 かわいそうなのは小太郎ですよ。そういう時代の話っちゅーことで納得させれば悲しくはあるけど,それ以前にあまりに陰惨だわいな。
 実際に僕の周りの客席にシクシク泣いてるお客さんが結構いたけど,現代っ子にはちっとそこまで感情移入できません。
 2列前に座ってたインド系?の若い外国人の女性が,シクシク泣いてる音がするのを不思議そうにキョロキョロ見回してたけど,こんな陰惨な話で泣いてるっての理解するのが難しかったんじゃなかろうか。
 
 最後の演目「八重桐廓噺(やえぎりくるわばなし) 嫗山姥(こもちやまんば)」。
 ストーリーはわかるんだけど,後半,なんでそーなるのの連続。
 これも平安時代の話。歌舞伎は江戸時代以降の文化だから,「寺子屋」もこれも当時の昔話なんです。
 芝居全体と芝居に出てこない後日談も含め源頼光が裏のキーパーソンになっています。
 父の仇討ちのために侍・坂田蔵人時行(中村梅玉。以降役名は蔵人と略します)が浪人し煙草屋家業に身をやつしてます。お屋敷のお姫様に煙草売りの口上を気に入られて頻繁に出入りしてるんですが,ある日,蔵人が過去に契りをかわした元高級遊郭の遊女で今は文売り(ラブレター代筆業みたいなものらしい)の八重桐(中村時蔵)がお屋敷の前を通りかかります。そのとき蔵人はお姫様にしつこく結婚を迫る清原高藤の遣いをうまいこと追い返したことで調子にのって姫様の前である歌を歌ってるんですが,その歌が実は蔵人が遊女時代の八重桐と2人で作った歌なんです。蔵人がいると気づいた八重桐が売り声を声高に上げると,姫様の腰元が聞きつけて姫様が用があるというので八重桐はうまく屋敷に入り込みます。
 偶然の再会に驚く蔵人。再び結ばれる約束をしたのに仇討ちのためにいつまでも自分のもとから離れていた蔵人を恨んでいる八重桐は,姫様の所望で,いままでの来歴を語るんですが,これは蔵人へのあてつけです。なんか廓で他の女といざこざがあったらしいんですわ。蔵人は結構遊び人なんですな。
 ここから話がおかしくなってきます。
 蔵人と八重桐2人になる場面。蔵人は父の敵討ちをする目的で浪人し,敵討ちが済むまでの約束で八重桐と離縁し,源七と名を変え煙草売りになってるわけだけど,実はうかうかしてる間に,妹の糸萩が先に父の敵討ちをしたんだと八重桐に知らされます。
 するとwww,そこになんと姫様のお屋敷に白菊という変名で腰元として勤めてた,妹の糸萩(片岡孝太郎)が登場!!(兄貴が出入りしてたの知っててなんでいままで黙ってたんだ~?!)不甲斐ない兄をなじるんです。八重桐も参戦。蔵人は追い詰められます。
 ちょっとよく考えてくださいよ。同じ父の仇なんだから,ふつーなら妹よよくやった,お兄様敵は私が討ちました,で,めでたしめでたしになるべきでしょ。それがなんと・・・
 プライドをことごとく傷つけられたんだか,蔵人いきなり切腹!!!ここからもっとおそろしいわけわからん事態が起きます。
 笑っちゃダメですよ。息絶え絶えの蔵人は切った自分の腹から八重桐に臓腑を飲ませるんです。おいおい・・・。
 するとしばらくして死んだ蔵人の遺恨が八重桐の胎内に宿り(なぜか臓腑を飲んで妊娠)八重桐の人格が変貌します。
 ・・・昔の人は思考というのは脳ではなく腹で起きてることだと思ってたふしがあるのでこういうことになるんだろか。例えば「腹黒い」とか「腹では何を考えてるかわからない」とか「腹を割って話そう」とかいう言い回しがあるみたいに。かといって脳みそ吸っても妊娠はしませんよwww。
 するとまた姫様のところに清原高藤の遣いが手勢を連れてやってきて今度は力づくで奪おうとするところを,大力無双の山姥に変貌した八重桐がメッタメタにやっつけます。蔵人の妹・糸萩も加わって,八重桐は姫様は糸萩に任せたとなって糸萩は姫様をかばいながら花道を通ってどこだかに逃げていきます(どこに逃げるんだかw)。
 こういう,女が強くなって悪者をやっつけるってのを江戸時代の人は結構喜んで見てたらしいです。
 で,芝居は終わりなんですが,八重桐の胎内に宿った蔵人の遺恨はその後どうなると思います?蔵人の苗字は坂田ですよね。山姥八重桐はその後,坂田金時を産むんです。坂田金時=金太郎さん。
 「寺子屋」の陰惨といい,この「嫗山姥」のわけわからなさとハラキリといい,終幕して帰るとき西洋人が深刻な顔をして帰り支度をしてました。純粋にあ~おもしろかったねー,って演目のものを見た帰りの雰囲気ではない雰囲気が漂ってた気がしました。
 
 真ん中でやった「船弁慶」は松羽目物(能の演目を歌舞伎に持ってきてやるやつ)。
 話は静御前(尾上菊五郎)と別離した源義経(中村富十郎)ら一行が舟出するが海がにわかに荒れてきて平知盛の怨霊が現れるので武蔵坊弁慶(市川左團次)が必死に祈祷して怨霊を鎮める,という単純なものなのだが,これはストーリーを楽しむものではありません。
 静御前と平知盛の怨霊は同じ役者(尾上菊五郎)が務めます。ここがキモです。
 義経との別れを悲しむ静御前の静かな舞と,後半の平知盛の怨霊の長刀を振り回し暴れまわる激しい舞踏との対照的なのを,同じ役者がやるのが面白いわけです。
 源義経が富十郎。おじいさんじゃん。まあ,座って台詞を言うだけだからいいですけど実は富十郎は5年前まで静御前&平知盛やってたらしいです。70代で知盛の怨霊の激しい踊り普通のじいさんならできねーよ。74歳で33歳年下の奥さんとの間に長女が生まれてワイドショーネタになったくらいだからふつーのじいさんじゃないんだろうな。
 舟長三保太夫は中村芝翫
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【2008/11/17 22:58】 | 雑記 | TRACKBACK(0) | COMMENT(0) |
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